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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(三) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 201,612 characters · 405 screens
そこで、それはいつ頃なくなったんだ」
「それが判らないんです。なにしろきのうの夕方までは確かにあったというんですから、その後になくなったものに相違ないんです」
「なるほど」と、半七は眉を寄せた。「そこで、そのお浪という女には悪い足でもあるのかえ」
「どうも確かな見当が付かないんですが、ふだんから少し病身の女で、勤めがいやだと口癖に云っていました。けれども時が時で、おまけに張子の虎がなくなっているもんですから、なんだかそこがおかしいので……」
「まったくおかしい、なにか訳がありそうだ。ほかにはなんにも紛失物はないんだね」
「ほかには何もないようです」
「よし、判った。それもなんとか手繰り出してやろうから、主人によくそう云ってくれ」
「なにぶん願います」
与七は雨のなかを急いで帰った。材料はいつも三題噺のようになる。重ね草履と張子の虎とお浪の駈け落ちと、この三つの材料を繋ぎあわせて、半七はしばらく考えていた。商売上の妬みか、又はなにかの遺恨で、お浪がお駒を絞め殺したと仮定する。宿場かせぎの女郎などは随分そのくらいのことは仕兼ねない。相手を殺して素知らぬ顔をしていたが、なにぶんにも気が咎めるので、とうとう居たたまれなくなって逃げ出した。