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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(三) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 201,612 characters · 405 screens
たいしてむずかしいこともあるめえ」
「あい。ようがす。なるたけ早く聞き出して来ましょう」
「しっかり頼むぜ」
ここの勘定は半七が払って、三人は料理屋の門を出ると、宵闇ながら夜の色は春めいて、なまあたたかい風がほろよいの顔をなでた。半七は去年泊まった上州屋へゆくことにして、ここで三五郎に別れた。
「親分。その勝蔵という奴がおかしいんですかえ」と、松吉は四、五間あるき出してから小声で訊いた。
「むむ。もうこれで大抵判った。ロイドという奴を引き挙げりゃあ世話はねえんだが、異人じゃあどうも面倒だからな。まあ、いい。折角乗り込んで来た甲斐があった」と、半七は星あかりの空を仰いで笑った。
四
あくる朝、二人がまだ起きないうちに、三五郎が上州屋へたずねて来た。
「ばかに早えな。横浜の人間は違ったものだ」と、半七は寝床のうえに起き直った。
「久しぶりで逢った親分に叱言を聞いちゃあ詰まらねえから、大急きでゆうべのうちに調べあげて来ましたよ」と、三五郎は自慢らしく云った。「その勝蔵という奴は、今月の初め頃まではこっちにぶら付いていましたが、なんでも小半月ばかり前に江戸へ帰ったそうです」