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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(三) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 201,612 characters · 405 screens
おまえと重吉とはおなじ国者だ。それが一つ屋根の下に毎日一緒に暮らしていれば、おたがいに気も合い、話も合って、若い者同士がいろいろの約束をするのも無理はねえ。だが、男という奴は気の多いもので、おまえというものを袖にして、いつか尾張屋の娘とも仲よくなって、さぞ口惜しかったろう。おれも察しるよ」
おかんはやはり俯向いていた。
「ところが、おれに少し判らねえ事があるから教えてくれ」と、半七は云った。「尾張屋の娘はなぜ鼠捕り粉を買ったのだ。ひとりで死ぬつもりか、心中かえ。おい、黙っていちゃあいけねえ。それに因っておまえの罪の重い軽いも決まるのだ。はっきり云ってくれ。どの道おまえは無事に主人の家へ帰られる身の上じゃあねえ。くどいようだが、正直に申し立てて御慈悲を願うがいいぜ」
「どうしても家へは帰れないのでございましょうか」と、おかんは蒼ざめた顔をあげた。
「知れたことさ。重吉という男ひとりを殺して置いて、無事に帰される筈がねえじゃねえか」
おかんは泣き伏してしまった。
雷獣事件はこれで解決した。
万事が半七の鑑定通りであった。重吉はおかんと夫婦約束をしていながら、さらに尾張屋のお朝とも親しくなった。