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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(三) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 201,612 characters · 405 screens
道連れといっても、これは自分の娘の命を救ってくれた恩人であるから、伝兵衛主従も決して彼を疎略には扱わなかった。
その晩は小山の宿に泊まったが、旅籠賃その他はすべて伝兵衛が賄った。これから幾日もつづく道中に、それではまことに困ると澹山はしきりにことわったが、伝兵衛はどうしても肯かなかった。あくる晩は宇都宮に着いたが、その翌日も午すぎまでここに逗留して、伝兵衛は澹山を案内して二荒神社などに参詣した。その後の道中も、毎晩の宿はかなりの上旅籠で、澹山はなんの不自由もなしに奥州路にはいった。
二
この年は正月から照りつづいて江戸近国は旱魃に苦しんだと伝えられているが、白河から北にはその影響もなくて、五月の末には梅雨らしいしめり勝ちの暗い天気が毎日つづいた。この雨にふり籠められたばかりでなく、旅絵師の澹山は千倉屋の奥の離れ座敷に閉じ籠って、当分は再び草鞋を穿きそうもなかった。
その頃の旅絵師といえば、ゆく先々で自分の絵を売って、それを路用としてそれからそれへと渡ってゆくのが習いであった。千倉屋伝兵衛もその事情を知っているので、ともかくも自分の家に当分逗留して、相当の路用を作り溜めた上で出発することにしたらよかろうと途中でも切りにすすめたので、澹山もその親切をよろこんで、云わるるままに千倉屋の厄介になることに