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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(三) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 201,612 characters · 405 screens
は云えない。一途に思いつめた女の心のおそろしいことを、半七は多年の経験でよく知っていた。お粂の判断は自然であり、お広の想像はやや不自然であるが、世のなかには普通の尺度で測ることの出来ない不思議の多いのをかんがえると、半七はまだ容易にどちらへも勝負をつけるわけには行かなかった。彼は賽をつかんだまま神田の家へ帰った。
三
その夜はあけて、七日の朝になった。きょうも朝から暑い日で、あまの河には水が増しそうもなかった。いろがみの林を作った町々の上に、碧い大空が光っていた。
半七は朝飯をすませて、すぐに山村小左衛門の家をたずねると、きょうは五節句で稽古は休みであった。小左衛門もお直の一条では胸を痛めているので、半七を奥へ通すと、丁寧に挨拶して、なんとか探索の方法はあるまいかと頼むように相談した。かれは四十五六の人柄のいい男で、半七の問いに対してこう答えた。
「お直もお力も九つの春から手習いに来て居ります。わたくしも自分の教え子の行状については、ふだんから相当に気をつけて居りますが、お直はおとなしいようでもなかなか強情の気質、お力は男の子のように跳ね返っている女で、人間は少し愚らしく見えます。