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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(三) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 201,612 characters · 405 screens
しかしその死骸が水を飲んでいるのをみると、息のあるうちに沈んだことだけは確かめられた。
「どうでしょう。この池を掻掘りさせるわけには行きますまいか」と、半七は云った。
池の底にどんな秘密がひそんでいないとも限らないので、役人たちもすぐに同意した。人足どもを呼びあつめて、師走の寒い日にその池の掻掘りをはじめると、水の深さは一丈を越えていて、底の方から大小の緋鯉や真鯉が跳ね出して来たが、そのほかにはこれというような掘出し物もなかった。お葉のさしていたらしい櫛が一枚あらわれた。小半日をついやして、これだけの獲物しかないので、役人たちも失望した。それから家内を隈なく猟ってみたが、どこも皆きちんと片付いていて別に取り散らしたような形跡もみえなかった。差しあたりはこの以上に詮議のしようもないので、あとの探索は半七にまかせて、役人たちは一旦引き揚げた。
半七はあとに残って、其月の身許しらべに取りかかった。かれの親類や、かれの弟子や、出入りの者や、それらの住所姓名を一々に調べることにした。子分の庄太を千住へやって、お葉の身許もしらべさせた。検視が済んでも、誰かその始末をする者がなくては、二つの死骸をどうすることも出来ないので、家主と近所の者四、五人があつまって来て、ともかくもその死骸の番をしていることになった。