Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(二)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(二) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 215,865 characters · 432 screens
あの富さんが焼け死んで……。お津賀さんも……」
「そうですか」
半七はすぐに火元へ行った。もうこうなっては仮面をかぶっていられないので、かれは自分の身分を名乗って、家主立ち会いで焼け跡をあらためた。近所の人達が早く駈け付けて、すぐ叩き毀してしまったので、半焼けと云っても七分通りは毀れたままで焼け残っていた。半七はその家のまわりを見廻りながら、ふとその隣りの稲荷の祠に眼をつけた。
「この稲荷さまは無事だったんですか」
「火の大きくならなかったのも、お稲荷様のおかげだと云って、長屋じゅうの者も喜んでいます」と、家主は云った。
「喜ぶのは間違っている」と、半七はあざ笑った。「お稲荷さまに御利益があるなら、はじめからこんな騒ぎを仕出来さねえがいい。家を焼いて、人を殺して、御利益もねえもんだ。いっそ刷毛ついでにこの稲荷も燃してしまっちゃあどうです」
無法なことを云うとは思ったらしいが、相手が相手なので、家主は苦り切って黙っていると、半七は足下にまだちろちろと燃えている木のきれを拾って松明のように振りあげた。
「ようがすかえ。この稲荷に火をつけますぜ」
「お前さん。とんでもないことを……」