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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(二)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(二) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 215,865 characters · 432 screens
「して、御祈祷をおたのみでござるか」と、式部は訊いた。
「はい」と、半七は再び頭をさげた。「実はわたくしの母が昨年以来、なにか付き物でも致したようで、時々に取り留めもないことを口走りますので、まことに困り果てて居ります」
何分にもそのお祓いをお願い申したいと云って、半七は白木の台付きの箱をうやうやしく捧げて出した。箱の形から見て、それは一匹の白絹であるらしかった。式部も会釈して、その箱をうけ取って、まず行者のまえに押し直すと、行者は幣束を取り直してその箱のうえを一度払った。そうして、神前に供えよと頤で知らせると、式部は心得てその通りにした。
「お聴きの通りでございますが、お祷り下さりましょうか」と、式部はあらためて行者に訊くと、彼女はやはり無言でうなずいた。
「では、もっと近うお進みください。御遠慮なく……」
式部は半七を頤でまねいた。半七は会釈して又ひと膝すすみ出ると、行者の衣にはなにかの香が焚き籠めてあるらしく、蘭奢とでもいいそうな一種の匂いが彼の鼻にしみた。
四
行者は半七の顔をひと目みて、さらに何事かを問いたそうに式部を見かえると、半七は声をかけた。