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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(五)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(五) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 215,744 characters · 434 screens
「おい、幸。飛んでもねえ事になってしまったな」
「まったく驚きました。お信を早く探し出せば、こんな事にゃあならなかったのですが……」と、幸次郎も残念そうに云った。
「それに浅井の屋敷もよくねえ。今じゃあ家督を相続している小太郎という人が、二、三日前から家出しているのを黙っていることはねえ。八丁堀の旦那衆の方へ内々で沙汰をして置いてくれりゃあ、なんとか用心の仕様もあったものを……。そうは云うものの、それからそれへと悪い事つづきで、屋敷の方でも面目ねえから、旦那方へは沙汰無しで、内々そのゆくえを探していたのだろうが……。もうこの上は仕方がねえ。三千石の屋敷も潰れる」
「潰れるでしょうね」
「先代の主人の水死は不時の災難としても、又ぞろこの始末だ。所詮助かる見込みはあるめえよ」と、半七は嘆息した。「考えてみると、おれも悪かった。このあいだ小梅の長五郎の話を聴いた時に、すぐに旦那に知らせて置けばよかった。そうしたら、旦那の方から浅井の屋敷へ内通して、若主人の出入りを厳重に見張らせたかも知れねえ。お屋敷のお名前にもかかわる事だから、決して他言してくれるなと長五郎に泣いて頼まれたので、おれもなんだか可哀そうになって、今まで口を結んでいたのが却っていけなかったようだ。