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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(五)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(五) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 215,744 characters · 434 screens
「ここらは大そう釣れると云うから……」
「じゃあ、やっぱり釣りですか。わたくしも一度、近所の人に誘われて、ここへ釣りに来たことがありました。しかし何処へ行っても、下手は下手で……」
釣りの失敗話などをして、才兵衛は自分の座敷へ帰った。そのうしろ姿を見送って、善八はささやいた。
「あいつ、成田から帰る途中、ひとりでここへ廻って来たのは、なにか堀り出し物のあてがあるんですぜ」
「まあ、そうだろう。あいつも商売にゃあ抜け目がねえからな」
女中に訊くと、才兵衛はすぐに又どこかへ出て行ったとの事であったが、善八はすこし風邪を引いていると云い、海辺の風は殊に寒いというので、半七らはどこへも出ずに一泊した。
あくる日は風も凪いで、十二月にはめずらしい程のうららかな日和となった。ここから一里あまりの堀江までは、陸でも舟でも行かれるのであるが、半七らは陸を行くことにして、あさ飯の箸を置くとすぐに宿を出た。出るときに又もや才兵衛に逢った。彼も堀江へ行くと云うので、三人は一緒にぶらぶらあるき出した。
才兵衛は例の通りに、如才なく話しながら歩いていたが、なんだか半七らの道連れになるのを厭うような様子が見えた。