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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(五)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(五) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 215,744 characters · 434 screens
看板にも国姓爺合戦と筆太にしるしてあった。
「国姓爺か。大物をやるな」
半七はふと何事かを考え付いたので、十六文の木戸銭を払ってはいった。虎狩の場に出るのは、和藤内の母と和藤内と、唐人と虎だけである。座頭の小三が和藤内に扮して、お粗末な縫いぐるみの虎を相手に大立ち廻りを演じていた。それだけを見物して、半七はもう帰ろうとしたが、また思い直して次の一幕を見物した。次は楼門の場である。
この場には和藤内の父母と、和藤内と錦祥女と、唐人と唐女が出る。錦祥女は小三の弟子の小三津というのが勤めていた。舞台顔で本当の年を測るのはむずかしいが、小三津はせいぜい二十四五であるらしく、眼鼻立ちの整った細面で、ここらの芝居の錦祥女には好過ぎるくらいの容貌であった。木戸銭十六文の宮芝居であるから、鬘も衣裳も惨めなほどに粗末であるのを、半七は可哀そうに思った。
虎狩の場に出る虎もなかなかよく動いた。虎にしては胴体が小さく、なんだか犬のようにも見えたが、身軽に飛び廻って、二、三度も宙返りを打ったりして、大いに観客を喜ばせていた。女役者にこんな芸の出来る筈はない。虎は男が縫いぐるみを被っているに相違ないと、半七は鑑定した。