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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(五)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(五) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 215,744 characters · 434 screens
又その出前には八丁堀の旦那のところへも顔出しをしなければならない。半七は忙がしい体であった。
八丁堀から葬式へまわると、寺は橋場であった。八ツ(午後二時)過ぎに寺を出て、ほかの会葬者とあとさきになって帰る途中で、半七はふと思いついた。子分の庄太の家は馬道である。弥助をけさ出してやったものの、自分も道順であるからちょっと立ち寄ってみようと、馬道の方角へぶらぶら辿ってゆくと、庄太は懐ろ手をして露路の入口に立っていた。
「やあ、親分。どこへ……」
「橋場の寺まで行って来た」
「弔えですか」
「むむ。弥助は来たか」
「まだ来ません。何かあったのですか」
「すこし頼んだことがあるのだが……。あいつは気が長げえから埓が明かねえ」
「まあ、おはいんなせえ。だが、きょうはあいにくの日で、大変ですよ。隣りの長屋二軒が根継ぎをするという騒ぎで、露路のなかはほこりだらけ……。わっしも家にいられねえから、表へ逃げ出して来たような始末で……」
庄太は笑いながら先に立って引っ返すと、なるほど狭い露路のなかは混雑して、二軒の古い長屋は根太板を剥がしている最中であった。そのほこりを袖で払いながら、その長屋の前を足早に通り過ぎようとする時、なにか半七の眼についた物があった。