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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(四) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 217,272 characters · 434 screens
「なんの用で来るのか知らねえか」
「やっぱりお金を借りに来るようです」
「この女じゃあ埒が明きますめえ」と、幸次郎は催促するように云った。「なにしろ早いが勝だから、すぐ本所へ廻りましょう」
「むむ。出かけよう」
お由には当分おとなしくしているように云い聞かせて置いて、半七と幸次郎は更に本所へむかった。駒止橋の近所で錺屋の増さんと訊くと、すぐに知れた。
「あの店におしゃべりらしい嬶がいる。あすこへ寄って内聞をしてみろ」
半七に指図されて、幸次郎は路ばたの魚屋へ立ち寄った。店さきで盤台を洗っている女房に話しかけて、錺屋の噂を聞き出すと、果たして彼女は口軽にいろいろのことをしゃべった。錺屋の増蔵は三十二三で、去年の春に女房に死に別れ、今では小僧と二人暮らしの男世帯である。腕はなかなかにいい職人であるが、女房をなくしてから道楽を始めて、諸方に義理の悪い借金が出来たらしいという。それで大抵の見当も付いたので、二人は錺屋へたずねて行くと、小僧がぼんやりと店に坐っていて、親方は二階に寝ていると答えた。
呼びおろされて出て来た増蔵はほろよい機嫌であったが、これは山出しのお由とちがって、江戸生え抜きの職人であるだけに、半七らが唯の人でないことに早くも気がついたらしく、俄かに形をあらためて丁寧に挨拶した。