Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(四) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 217,272 characters · 434 screens
一体この堤の草は近所の大名屋敷や旗本屋敷で飼馬の料に刈り取ることになっていまして、筋違から和泉橋のあたりは市橋壱岐守と富田帯刀の屋敷の者が刈りに来ていたんですが、そのあいだには例の清水山があるので、どっちも恐れて鎌を入れない。つまり筋違橋と和泉橋と両方の端から刈り込んで来て、まん中の清水山だけを残しておくので、わずか三間か四間のところですけれども、それだけは上から下まで、いつも高い草が茫々と生いしげっていて、気のせいか何だか物すごいように見える。そこに一つの事件が出来したんです」
慶応初年の八月初めである。ここらで怪しい噂が立った。誰が云い出したのか知らないが、日がくれてから一人の女が、この柳原堤の清水山のあたりにあらわれるというのである。正面にその女の顔をみた者もないが、どうも若い女であるらしい。旧暦のこの頃では夜はもう薄ら寒そうな白地の浴衣をきて、手ぬぐいをかぶって、まぼろしのように姿をあらわすというだけのことで、その以上のことは何もわからないのであるが、場所が場所だけに、それだけの噂でも近所の女子供の弱い魂をおびやかすには十分であった。
「なに、夜鷹だろう」