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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(四) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 217,272 characters · 434 screens
いくら待っても誰も出て来ねえので、庄五郎は引っ返して尋ねに来たのだが、まだ薄っ暗いので平七と途中で行き違いになったらしい。それがそもそも間違いのもとで、平七は待ちくたびれて茶店の葭簀のなかで寝込んでしまった。そこへ貴様が来たか、庄五郎が来たか、なにしろ二人が落ち合って……。それから先は、おれよりも貴様の方がよく知っている筈だぞ。そうして、白ばっくれてここの家へたずねて来た……。どうだ、おれの天眼鏡に陰りはあるめえ。来年から大道うらないを始めるから贔屓にしてくれ。そこで貴様もまさかに最初から庄五郎を葬ってしまう気でもなかったろうが、眼と鼻のあいだの葭簀のなかに平七が寝込んでいるとも知らねえで、その来るのを待っているうちに、場所は海端、あたりは暗し、まだ人通りも少ねえので、ふっと悪い料簡をおこしたのだろう。可哀そうなのは平七の野郎だ。あの女に亭主が無けりゃなんて、つまらねえことを云ったのが引っかかりになって、伊豆屋の手に引き挙げられたので、貴様はまた悪知恵を出した。庄五郎が一旦引っ返して来たなんて云うと、その詮議がまた面倒になると思って、実は自分が庄五郎の声色を使ったのだといい加減の出たらめを云って、なるべくこの一件の埒を早くあけて、罪もねえ平七を人身御供にあげてしまう積りだったのだろう。