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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(四) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 217,272 characters · 434 screens
半七は多く飲まないが、庄太は元来飲める口であるので、寒さ凌ぎと称してむやみに飲んだ。
「いいかえ、庄太。あんまり酔っ払うと置き去りにして行くぜ」
「そんな邪慳なことを云わねえで、まあ、もう少し飲ませておくんなせえ。信心まいりに来て、風邪なんぞ引いて帰っちゃあ、先祖の助六に申し訳がねえ」と、庄太はもういい加減に酔っていた。
このときに一挺の駕籠がここの店さきに卸されて、垂簾をあげて出たのは、かの中年増の女であった。女は金を払って駕籠屋を帰して、これも店口の床几に腰をかけたが、半七らと顔をみあわせて黙礼した。
「お駕籠でしたかえ」と、庄太は声をかけた。
「あるくつもりでしたが、なにしろ道が悪いので……」と、女は顔をしかめながら云った。彼女はほんの足休めに寄ったものと見えて、梅干で茶を飲んでいた。
ここらの店の習いで、庭と云っても型ばかりに出来ていて、その横手には大きい井戸があった。井戸のそばの空地には、五、六羽の鶏が午後の日を浴びながら遊んでいたが、その雄鶏の一羽はどうしたのか俄かに全身の毛をさか立てて、店口の土間へ飛び込んで来たかと見る間もなく、かれはそこに休んでいる中年増の女を目がけて飛びかかった。