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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(四) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 217,272 characters · 434 screens
その勢いが余りに激しかったので、おきぬはひとたまりもなく突き倒されて、まばらに閉めてある雨戸に転げかかると、雨戸ははずれた。その雨戸と共に、おきぬは暗い庭さきへころげ落ちた。
この物音は表の方まで響いたので、店の者もみな驚いて奥へ駈け込もうとする時、出逢いがしらにお節が飛び出して来たので、彼らは又おどろいた。しかも相手が主人であるので、さすがに手あらく取り押えかねたのと、あまりの意外に少しく呆気に取られて、唯うっかりと眺めているうちに、お節は彼らを突きのけて、今や卸しかけている大戸をくぐって表の往来へぬけ出した。
「早く押えろ」と、番頭の勘兵衛は呶鳴った。
それに励まされて、若い者や小僧は追って出た。そのなかでも新次郎という若い者が一番さきへ駈け出して、お節の右の袂を捉えようとすると、彼女は身を捻じ向けて振り払った上に、なにか刃物のようなものを叩きつけて又駈け出した。暗い夜で、雨は降りしきっている。その闇のなかをお節は駈けた。店の者共も追った。しかもお節は遠くも行かずに、眼の前の新堀川へ身を跳らせて飛び込んでしまった。
「身投げだ、身投げだ。若いおかみさんが身を投げた」