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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(四) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 217,272 characters · 434 screens
おめえは兄いを識っているのだろうね」と、半七は先ず念を押した。
「二、三度お目にかかった事があります。そこで兄いの御用というのは何んでございますね」
「少しおめえに訊きてえことがある。……おめえはおとといの晩、北新堀の鍋久へ何しに行ったのだね」
半介はぎょっとしたように眼を光らせたが、やがてにやにやと笑い出した。
「まったく悪い事は出来ねえ。徳次兄いはもう知っていなさるのかえ。こりゃあ恐れ入りました。まことに相済みません」
定めてシラを切るのだろうと思いのほか、余りあっさりと砕けて出たので、半七も少しく当てがはずれた。それと同時に、こいつなかなか図太い奴だと思った。
「徳次兄いに睨まれちゃあ助からねえから、何もかも正直に云いますがね。実はおとといの晩鍋久へ行って、ちっとばかり小遺いを貰って来ましたよ」と、半介はまた笑った。「だが、あの片袖は贋物でも拵え物でもねえ、全くわっしが品川へ夜釣りに行って引き揚げたんです。死骸を引き揚げるといろいろ面倒になるから、不人情のようだが突き流してしまって、片袖だけを取って来たんですよ」
「鍋久の一件を知っているのかえ」
「そりゃあ早いからね」