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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(四) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 217,272 characters · 434 screens
しかもお節はほんとうに死んだのか、或いはどこかに潜んでいるのか、まずその生死を確かめなければならない。自分たちの鑑定通りに、川へ飛び込んだのはお節の替玉であるとすれば、半介の話は全然うそである。自分を青二才とあなどって、いい加減に誤魔化すのである。嘘か、本当か、年の若い半七はしばらく思案に迷ったが、いかにも人を食っているような半介の態度が、正直に物をいう人間であるらしく思われなかった。半七は重ねて訊いた。
「きょうは八日だ。鍋久へ行ったのはおとといの夕方だから、その前の晩といえば五日だな。おめえは何処から舟を借りて出た」
「銭もねえのに釣り舟なんぞ借りるもんですか。品川の浪打ちぎわへ行って釣ったのさ」
「その釣り道具を見せてくれ」
半介はすぐに立って、奥の台所から釣り竿と魚籠を持ち出して来た。
「おまえさん、まだわっしを疑っているね」と、彼は笑った。「徳次兄いは何と云ったか知らねえが、わっしはそんなに悪い人間じゃありませんよ。あはははは」
ここでいつまで争っても水掛け論であると諦めて、半七は怱々にここを出た。鍋久へ片袖を持参したのは、半介に相違ないということを突き留めただけをみやげにして、彼はむなしく引き揚げるのほかは無かった。