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つきとてぶくろ
月と手袋
江戸川 乱歩
Read 月と手袋 (つきとてぶくろ) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 39,541 characters · 80 screens
映画界に出入りするようになってから、高利貸のくせに、そんな服装をするようになっていた。四十二歳というのだが、時とすると、三十五歳の克彦と同年ぐらいに見えることもあり、またひどくふけて、五十を越した老年に見えることもある。年齢ばかりではない、彼はあらゆる点で奥底のしれない、不気味な性格であった。
髭の薄いたちで、いやにツルツルした顔をしている。色は青白くて、眉がうすく、目は細く、鼻が長く、貴族面と云えば貴族面だが、貴族にしても、ひどく陰険な貴族である。
「おれは、前々から知っていた。知ってはいたが、確証をつかむまで、だまっていたんだ。その確証を一昨日の晩つかんだ。君のアパートだ。窓のカーテンに一センチほど隙間があった。注意しないといけない。一センチだって目をあててのぞくのには充分すぎるんだからね。おれはあのとき窓のそとから見ていたんだ。だが、おれはその場で飛びこむようなまねはしない。歯をくいしばって我慢をした。そして、今夜話をつけることにしたんだ」
彼は三杯目のウィスキーをあおっていた。
「申しわけない。僕らは甘んじて君の処分を受けようと思っている」
克彦は頭をさげるほかなかった。