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きのこせっぽう
木の子説法
泉 鏡花
Read 木の子説法 (きのこせっぽう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,107 characters · 34 screens
目をはずすまいとするから、弱腰を捻って、髷も鬢もひいやりと額にかかり……白い半身が逆になって見えましょう。……今時……今時……そんな古風な、療治を、禁厭を、するものがあるか、とおっしゃいますか。ええ、おっしゃい。そんな事は、まだその頃ありました、精盛薬館、一二を、掛売で談ずるだけの、余裕があっていう事です。
このありさまは、ちょっと物議になりました。主人の留守で。二階から覗いた投機家が、容易ならぬ沙汰をしたんですが、若い燕だか、小僧の蜂だか、そんな詮議は、飯を食ったあとにしようと、徹底した空腹です。
それ以来、涙が甘い。いまそのこぼれるにつけても、さかさに釣られた孤家の女の乳首が目に入って来そうで、従って、ご新姐の身の上に、いつか、おなじ事でもありそうでならなかった。――予感というものはあるものでしょうか。
その日の中に、果しておなじような事が起ったんです。――それは受取った荷物……荷は籠で、茸です。初茸です。そのために事が起ったんです。
通り雨ですから、すぐに、赫と、まぶしいほどに日が照ります。甘い涙の飴を嘗めた勢で、あれから秋葉ヶ原をよろよろと、佐久間町の河岸通り、みくら橋、左衛門橋。