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きのこせっぽう
木の子説法
泉 鏡花
Read 木の子説法 (きのこせっぽう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,107 characters · 34 screens
返す手で、
「焼きくおう。焼きくおう。」
鼻筋鋭く、頬は白澄む、黒髪は兜巾に乱れて、生競った茸の、のほのほと並んだのに、打振うその数珠は、空に赤棟蛇の飛ぶがごとく閃いた。が、いきなり居すくまった茸の一つを、山伏は諸手に掛けて、すとんと、笠を下に、逆に立てた。二つ、三つ、四つ。――
多くは子方だったらしい。恐れて、魅せられたのであろう。
長上下は、脇座にとぼんとして、ただ首の横ざまに傾きまさるのみである。
「一樹さん。」
真蒼になって、身体のぶるぶると震う一樹の袖を取った、私の手を、その帷子が、落葉、いや、茸のような触感で衝いた。
あの世話方の顔と重って、五六人、揚幕から。切戸口にも、楽屋の頭が覗いたが、ただ目鼻のある茸になって、いかんともなし得ない。その二三秒時よ。稲妻の瞬く間よ。
見物席の少年が二三人、足袋を空に、逆になると、膝までの裙を飜して仰向にされた少女がある。マッシュルームの類であろう。大人は、立構えをし、遁身になって、声を詰めた。
私も立とうとした。あの舞台の下は火になりはしないか。地震、と欄干につかまって、目を返す、森を隔てて、煉瓦の建もの、教会らしい尖塔の雲端に、稲妻が蛇のように縦にはしる。