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むらいちばんそうけいせん
村一番早慶戦
佐々木 邦
Read 村一番早慶戦 (むらいちばんそうけいせん) by 佐々木 邦 (ささきくに) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 16,468 characters · 34 screens
と東金君も全然同じ作戦だった。
同じ会社へ入って競争するのは気の詰まる話だと思ったが、今更後へは引けない。先方が通って此方が落ちれば、もう負けたも同じことだ。直ぐに郷里へ響く。この採用試験で一気に運命が定る。何方も一生懸命だったと見えて、二人とも合格採用ということになった。実は両方落ちて右左へ別れたかったのだが、敵と味方だから、それまで話し合いをつけることが出来なかったのである。
東金君は例の義兄の家から通勤し始めた。僕は万事鍛練という意味でアパート生活だった。独立独歩の決心は結構に相違なかったが、後見がないものだから、忽ち出し抜かれた。東金君は義兄の方の手蔓を辿って、逸早く社長令息と交際を結んだ。或は合格の方も義兄の背景が働いていたのだろう。社長令息は未だ平社員だけれど、若い連中におっ奉られている。親の光は七光り、その親が社長だから、特別扱いになっている。御本人も二言目には、
「親父が然う言っていたよ」
と会社の枢機らしいことに触れる。そのくせ仕事は些っとも分らない。僕は何も事情を知らなかったものだから、社長令息が苦手にしている硬骨漢原口君と別懇になってしまった。