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むらいちばんそうけいせん
村一番早慶戦
佐々木 邦
Read 村一番早慶戦 (むらいちばんそうけいせん) by 佐々木 邦 (ささきくに) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 16,468 characters · 34 screens
「それは覚悟の前だろう。出世の蔓だ。我儘を言っても、大切にしなければなるまい」
或日、東金君は鼻に膏薬を張って出勤して、皆の注目を惹いた。交通事故に引っかゝって、大難が小難で済んだという説明だった。しかし二三日たってから、夜分晩く僕のアパートへ訪ねて来て実情を打ち明けた。友情を誓って油断をさせる為めか、時々如何にも蟠りないように話し込む。しかし態やって来たのは初めてだった。
「君、君は忘れても上役の仲人で嫁を貰うんじゃない。まさか縁談は始まっちゃいまいな」
「うむ。大丈夫だ。しかし何うしたんだい?」
「僕は後悔している。妻が言うことを聞かなくても、課長の手前、グイッと押え切れない。益※(二の字点、1-2-22)増長して、この間はこれだよ」
と東金君は膏薬張りの鼻を指さした。
「夫婦喧嘩をしたのかい?」
「うむ。思い切って説諭したら、口答えをするんだ。東京の女は口が達者だ。僕は遣り込められて、口惜し紛れについ肩を押したんだ。すると組みついて来て、鼻に咬みついた」
「乱暴だね」
「あなた、腕力をお出しになりましたね。課長さんを呼んで来ますから、と言って出て行ってしまった。