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しょくぶつちしき
植物知識
牧野 富太郎
Read 植物知識 (しょくぶつちしき) by 牧野 富太郎 (まきのとみたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 43,784 characters · 86 screens
それはもと一球根から二球根、三球根、しだいに多球根と分かれゆきて集っている結果である。
花が済むとまもなく数条の長い緑葉が出で、それが冬を越し翌年の三月ごろに枯死する。そしてその秋、また地中の鱗茎から花茎が出て花が咲き、毎年毎年これを繰り返している。かく花の時は葉がなく、葉の時は花がないので、それでハミズハナミズ(葉見ず花見ず)の名がある。鱗茎は球形で黒皮これを包み、中は白色で層々と相重なっている。そしてこの層をなしている部分は、実に葉のもとが鞘を作っていて、その部には澱粉を貯え自体の養分となしていること、ちょうど水仙の球根、ラッキョウの球根などと同様である。そしてそこは広い筒をなして、たがいに重なっているのである。
近来は澱粉製造の会社が設立せられ、この球根を集め砕きそれを製しているが、白色無毒な良好澱粉が製出せられ、食用に供せられる。元来、この球根にはリコリンという毒分を含んでいるが、しかしその球根を搗き砕き、水に晒して毒分を流し去れば、食用にすることができるから、この方面からいえば、有用植物の一に数うることができるわけだ。
この草の生の花茎を口で噛んでみると、実にいやな味のするもので、ただちにそれが毒草であることが知れる。