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しょくぶつき
植物記
牧野 富太郎
Read 植物記 (しょくぶつき) by 牧野 富太郎 (まきのとみたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 165,848 characters · 327 screens
これは薄桃色すなわちいわゆる桜色の花が最う二月頃に咲く。花色が一方の緋寒桜より淡いから人によってはこれを白寒桜といっている。この樹はそう一方の者ほど寒を怖れないから熱海辺では最もよく育つ。現に同地では諸処にこれを見、かの熱海ホテルの庭には大分それが栽っていてその時期にはよくその花が咲いている。
この寒桜の苗をもまた少くて千本、多くてまず五千本を用意する。ソシテこれを前の緋寒桜の林へ接続させて林を造る。
段々年を経て右の両種の桜の木が生長し繁茂し熾んに花を着くる様になった後日を想像して見ると、どうでしょう、一方の林には赤色の桜が満開し、一方の林には白色の桜が競発して赤白の花が同時に綻びその盛観例えるに物が無いでしょう。しかのみならずそれが一月から二月へかけての事だ。普通の桜は仮令早い彼岸桜であってで見てもマダ眠りから醒めやらぬ前だ。アヽそれなのに熱海には早や赤白二色の桜が満開ダ。それを見逃してはなるものか、ソラ行けというワケで熱海行きの汽車はどれもどれも超満員ダ。こう来たらどうでしょう、同地宿屋の亭主の顔はそれでも顰んでいるでしょうか? その他同地の迎客場処は孰れも景気の好い事請合いでしょう。