Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Read 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 112,073 characters · 223 screens

Aozora Bunko

「いいよ、口ではかなやしないんだ」

新八はあぐらをかき、庭のほうに向かって、片方の膝をゆらゆらとゆすった。いま彼の顔には尊大さと、単純な自己充足の色があらわれていた。

「たしかに、私はお久米とそういう仲になってるよ」と彼は云った、「いやなことだ、私だってお久米とそういう仲になろうとは思わなかった、自分で自分がいやになる、じっさい自分でいやらしいやつだと思う、しかし、私をこんないやな人間にしたのは、私だけの罪ではないぜ」

おみやは泣きつづけていた。

「おまえは」と新八は云った。初めて口にするおまえという呼びかたが、彼自身の耳に、いかにもこころよく響くようであった。

「おまえは、あのことを私に教えこんだ、私はいやがった、私は恥ずかしさと怖ろしさとで、身も心もちぢみあがった」

「やめて、お願いだからやめて、新さん」

「いや私はやめない」と彼は執拗な調子で云った、「おまえは恥ずかしさとこわさでふるえている私に、むりやりあれを教えこんだ、私は逃げだすこともできない、伊達家の者にみつかれば、捉まって殺されるし、まだ子供で生活する手段も知らなかったから、――おまえはそういう私の弱味を押え、威したりすかしたりして自分の思うままにした、あのことはふしぎだ、いちど覚えてしまうと、それなしには済ませなくなる、あんなに恥ずかしく、怖ろしく