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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Read 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 145,078 characters · 285 screens
――証人に出された十三年の苦労が実をむすんだのだ。
みごとに実をむすんだ、周防もさぞ満足であろう、と甲斐は心の中で呟いた。そのとき柴田外記が声をかけた。
「船岡どのはどう思われる」と外記は冷やかに訊いた、「異議があるならうかがいたいが」
甲斐はゆっくりと答えた、「采女どのを直すことは、なるまいと思います」
「ならぬ、と云われるか」
「論に及ばぬことだと思います」
外記の顔が屹とひき緊った。それは期待を裏切られたというより、はたしてそうかという、期待どおりの答えに反する、敵意と緊張のあらわれのようにみえた。
「理由がありましょうな」
「申すまでもなく、理由ははっきりしております」
「それをうかがいましょう」
甲斐は扇子を膝の前に置き、眼を戸外へ向けて、その眼を眩しそうに細めた。
「申すまでもないことですが」と甲斐は穏やかに云った、「その一は、すでに両後見が不承知の意を示されていることです」
「両後見ではなく一ノ関さまだ」と外記が遮った、「岩沼さまは押しつけられただけで、不承知という意見は一ノ関さまのものだ、その点はもう疑う余地のないことでしょう」
「その二は」と甲斐は云った、「――采女どのが七十郎と同じ罪で処罰されたことです、たとえ教唆されたにせよ、一族もろとも死罪に仰せつけられた七十郎と、同罪の処罰を受けた者が、そのまま