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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Read 次郎物語 (じろうものがたり) by 下村 湖人 (しもむらこじん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,773 characters · 294 screens
」
と、恭一にたずねた。
「うむ。」
次郎の神経は敏感に動いた。
(二人は、自分のことを、もう何か話しあったにちがいない。)
彼は、そう思うと、同時に大沢の襟章に注意した。それは四年の襟章だった。彼は、おやっ、という気がした。
「大沢君っていうよ。僕の親友で、同じクラスなんだ。」
恭一にそう言われて、次郎はあらためて大沢を見た。張りきった浅黒い顔には、頬から顎にかけて一分ほどにのびた髯さえ、まばらに見える。どう見ても恭一の仲間らしくない。彼は、大沢が五年生でないことがわかって急に楽な気持になったが、同時に、何か滑稽なような気もした。
「みんなで僕を親爺って言うんだよ、わっはっはっ。」
大沢は自分でそう言って、次郎を笑わした。次郎は、それですっかり彼に好感を覚えたらしく、坐りかたまで楽になった。
三人はそれから、恭一が階下から持って来た煎餅をかじりながら、いろんな話をした。これといってまとまった話題もなかったが、三人とも少しも飽いた様子がなかった。学校の話もおりおり出た。しかし、次郎は、雨天体操場事件について、自分から話し出そうとは決してしなかった。
おおかた一時間ほどもたったころ、とうとう大沢がたずねた。