Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Read 次郎物語 (じろうものがたり) by 下村 湖人 (しもむらこじん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 159,223 characters · 320 screens
次郎の眼には、正木の家で見た若い地鶏が、いつもちらついていた。しかし彼は、機会を選ぶことを決して忘れなかった。めったなことで兄弟喧嘩をはじめて、また父に煙管でなぐられたりしてはつまらない、と思ったのである。その代り、これなら大丈夫だと思う機会さえ見つかれば、母や祖母がどんなに圧迫しようと、今度こそは死物狂いでやってみよう、という決心がついていた。
ところで、そうなると、思うような機会はなかなかやって来ない。それに、誰もが、このごろの彼に対して、以前とはちがって警戒の眼を見張っている。恭一や俊三は、お祖母さんの差金もあって、めったに彼のそばによりつかない。みんなが遠巻きにして彼を見まもっているといったふうである。彼は多少手持無沙汰でもあり、癪でもあった。しかし、それならそれでいい、とも思った。そして相変らずむっつりしていた。
梅の実が色づくころになった。
彼は、例によって、学校の帰りに五六人の仲間と墓地で戦争ごっこをはじめていた。そこへ、おくれて馳せつけた仲間の一人が、次郎の顔を見ると、大ぎょうに叫んだ。
「恭ちゃんが、いじめられているようっ。」
次郎は別に驚いた様子もなく答えた。