Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぶしゅうこうひわ
武州公秘話
谷崎 潤一郎
Read 武州公秘話 (ぶしゅうこうひわ) by 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 107,572 characters · 209 screens
たであろう。牡鹿山の老臣共は、此の形勢を見て今更のように狼狽した。一刻も早く坊主共を退治しなければ、やがて領内は蜂の巣を突ッついたようになる。彼等の勢いが猖獗を極めるに従って、先年謀叛を企てたことのある月形城の横輪豊前守は、既に彼等と気脈を通じて動き出そうとする様子が顕然としているし、そのうちには馬場氏も取りかけて来るであろう。で、これはどうしても徹底的に討伐しなければならないと云うので、老臣中の筆頭である筑摩将監春久に一萬数千の大兵を授けて、浅沼、栗生、椎原の三郡に群がる一揆共を蹴散らしつゝ、三方から彼等の根拠地を攻めにかゝった。檜垣衆の方は、もうその頃は次第に兵力が増大していたけれども、筑摩方に比べれば三分の一の小勢であったから、そうなると流石にじり/\と追い詰められて浅沼郡の要害へ引き退き、塁を高くし、濠を深くして、防ぎ戦うより外はなかった。此の持久戦が三月から四月に亙り、一箇月半程つゞいたが、檜垣衆は五月になって、多聞山の城主武州公の許へ公然と加勢を求めて来たのである。
いったい檜垣衆の立て籠る浅沼郡は、筑摩家の本領と武州公の本領の中間に介在していて、筑摩家の方は西、武州家の方は東にあった。