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むさしたびにっき
武蔵旅日記
山中 貞雄
Read 武蔵旅日記 (むさしたびにっき) by 山中 貞雄 (やまなかさだお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,659 characters · 27 screens
道理が無い」
と乞食の手を掴んで、
T「仇討本懐の日を
祈り申すぞ」
と老臣に金子を包ませて、
それを乞食に与え、
T「些少乍ら
余の志じゃ」
乞食はまるで、鳩が豆鉄砲を喰った形。呆然と殿様を見守る。
坂部文六が、木蔭で、此の様子を見て、ほくそ笑んだ。(F・O)
S=宿の横手――夜
坂部文六、杖を付いて、
フーフー、云い乍ら、歩いて来る。
苦しそうに唸って居る。
其処へ殿様と老臣連の御忍びが通り掛った。
殿様、フト文六を見て、
「如何召された」と抱き起す。
S=その二階
手摺りに凭れて、下の様子を見て居る、武蔵と団九郎である。
S=下では
殿様の前に手を付いた
文六が懸命の熱演である。
T「父の敵を求めて
放浪八年」
「八年?」と殿様驚いた。
文六尚も苦しそうに、
T「未だ、仇敵に
廻り逢わざるに
路用の金子は
尽き果てて」
殿様聞くより「アイヤ
T「皆迄申すな
泣けて来る」
と文六の手を握って、
T「辛いで
あろう喃」
と言って、老臣を振り返って、それッと言う。
文六横目でソレと見て成功と喜んだ。
S=二階
武蔵が団九郎に耳打ちする。
団九郎心得て袍褞の儘、大悦びで、今しも殿様が、文六に金子を与えんとする時、