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しけんといきなわ
死剣と生縄
江見 水蔭
Read 死剣と生縄 (しけんといきなわ) by 江見 水蔭 (えみすいいん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 15,104 characters · 31 screens
飯岡の助五郎とは兄弟分で有った。
その火渡り甚右衛門が病死しても、後家のお鉄が男まさりで、まるで女の御用聞きも同然だという処から、未だ朱房の十手を預っているかのように人は忌み恐れていた。
「生縄のお鉄は男の捕物に掛けては天下一で、あれに捕ったら往生だ。罪の有る無しは話には成らぬ。世にも不思議な拷問で、もう五六人は殺されたろう。阿波の高市に来た旅役者の嵐雛丸も殺された。越後の縮売の若い者も殺された。それから京の旅画師に小田原の渡り大工。浮島の真菰大尽の次男坊も引懸ったが、どれも三月とは持たなかった。あれが世にいう悪女の深情けか。まさか切支丹破天連でも有るまいが、あの眼で一寸睨まれたら、もう体が痺れて如何する事も出来ないのだそうな」
斯うした噂は至る処に立っていた。
とは知らぬ磯貝竜次郎、武者修行に出て利根の夜船に乗った時に、江戸帰りのお鉄と一緒で有った。年齢は既に四十近く、姥桜も散り過ぎた大年増。重量は二十貫の上もあろう程の肥満した体。色は浅黒く、髪の毛には波を打ったような癖が目立って、若も生端薄く、それを無造作に何時も櫛巻きにしていた。鼻は低く、口は大きく、腮は二重に見えるので有ったが、如何にも其眼元に愛嬌が溢れていた。