Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しけんといきなわ
死剣と生縄
江見 水蔭
Read 死剣と生縄 (しけんといきなわ) by 江見 水蔭 (えみすいいん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 15,104 characters · 31 screens
と小虎まで蒼く成った。
「藻切りに心奪われて、此方には気が着かなんだが、何時の間に、何者が」と竜次郎憤激しても、如何しようも無いので有った。
遠寺の鐘さえ鳴り出した。一瞬き毎に四辺は暗く成るのであった。冷たい風は二人の肌に迫るので有った。
「兎に角、人家のある方へ廻って、其方の濡れた着物も乾そう、拙者の紛失物も人手を加えて探して見よう。誰か盗人の姿を見た者が有るかも知れぬで」と竜次郎は先に、立木台下の方へと蘆原を進んだ。小虎も後から附いて来た。
手甲脚半の他は裸の竜次郎、下帯に小刀をさした風は、醜態此上も有らぬ。奇禍とは云いながら、何んという有様。皆是剣道の師の命令に叛き、女侠客の為に抑留されて、心ならずも堕落していた身から出た錆。斯う成るのも自業自得と、悔悟の念が犇々と迫った。
台下の農家、取着きのに先ず入ったが、夜に入っては旅の人に取合わぬ此土地の淀と云い張って、閾から内へは入れなかった。事情を訴えても聴くので無かった。
次の一軒、其所は大急ぎで戸を締めて、呼べど叩けど答えも無かった。其他三四軒を訪れたが、悉く断わられた。
途方に暮れて竜次郎と小虎とは、再び元の渡し口まで帰った。