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せっしょうだにのおにび
殺生谷の鬼火
山本 周五郎
Read 殺生谷の鬼火 (せっしょうだにのおにび) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 9,545 characters · 19 screens
「じゃあ僕は午睡をするとしよう」
そう云って敦夫は寝椅子へ横になり、手に持った記録の冊子を、光を除けるために顔の上へ伏せて眼を閉じた。
ひと晩殆ど眠っていないので、敦夫はそのままぐっすり熟睡した。女中が午飯を知らせに来たのも知らず、午後三時近くまで眠って、ふと眼が覚めたので起上ろうと、顔の上の冊子を取ろうとした時、何をみつけたか、
「おや――?」
と低く呟いた。眼前にある冊子の紙が、窓から来る光のために透いて見える、――その紙の端のところに、紙へ漉込んだ文字がありありと見えたのだ。
「変だぞ、――これは、……」
敦夫は臥破と起上った。そして記録の紙を一枚一枚、光に透かして叮嚀に見ていたが、急にそれを投出して立上った。
「益々分らなくなった、――否そうじゃない。秘密の鍵をみつけたのだ。……待て、考えなくちゃならんぞ、是が若し――」
敦夫は立止まった。眉のあいだに深い皺が畳まれている。やがて何か重大な事を考えついたらしい。こくりと一つ頷くと、足早に土蔵の中へ入って行ったが、間もなく一挺の猟銃と弾丸筐を持出して来た。――その猟銃は父の愛用品で、英吉利から態々取寄せた二聯銃身の精巧な物だった。