Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ぼしじょじょう

母子叙情

岡本 かの子

Read 母子叙情 (ぼしじょじょう) by 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 77,355 characters · 153 screens

Aozora Bunko

「うん」

かの女は忙しく逸作に馳け寄ってこういう間も、眼は少年の後姿から離さず、また忙しく逸作から離れ、逸作より早足に少年の跡を追った。

美術学校の帰りにむす子は友達と、ときどきモナミへ来て、元気な画論なぞした。そして出て行ったあと、偶然すぐかの女たちがそこへ入って行くと、馴染のボーイは急いで言った。

「坊ちゃんが、坊ちゃんが、いますぐ、出て行かれました。間に合いますよ」

むす子の気配が移ったように、ボーイ達も明るく元気な声を出した。

格別呼び返すほどのことも無いと思いながら、やっぱりかの女は駆けて往来へ出て見る。友達と簡単な挨拶を交して、とっとと家路へ急ぐ、むす子の後姿が向うに見えた。かの女はあわてて呼び返した。

むす子は表通りの人中で家の者に会うと、ちょっと気まりの悪い顔をして、ろくな挨拶もしなかった。それでいて、なつかしそうな眼つきをちらりと見せた。

わけて彼女と人中で会うのは苦手らしかった。かの女の方もどうかしてか、とても気まり悪かった。それで、「へへん」と田舎娘のような笑い方をして、まじまじむす子を見入っていると、むす子は眼を外らし、唇の笑いを歯で噛んでいった。