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あらいづくりのせかい
洗いづくりの世界
北大路 魯山人
Read 洗いづくりの世界 (あらいづくりのせかい) by 北大路 魯山人 (きたおおじろさんじん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 2,135 characters · 5 screens
鮎の肉とはちがって、これはもちもちとした鈍重な舌ざわりで、しかも、その中に言いようもなく淡泊で、調子の高いものが含まれている。薄紅を誘って、ほのぼのとした白さをもち、大半透明なところで打ち止めている。その肉の色を見ただけでも、食味の機能はおのずから動き出ようとする。しかし、これも都会にいては話に聞くだけのもので、どうするわけにも行かぬが、暑を山中に避けて、もし、いわなが手に入った場合、これを試みないという法はない。
海の魚では、この五、六月を節として、かれい類が洗いづくりに向いている。がんぞうかれいは美味いが品が少なく、東京でもよほどの食道楽家でないかぎり、これをはっきり承知している者がない。星がれいの洗いづくりも美味い。これは一般向きには、かれい類中の王者として扱われているようであるが、幸い品も豊富で、東京の一流どころの料亭十軒ばかりが使うだけは、毎朝の魚河岸に、その生彩を点じている。
まこがれいもちょっと食える。石がれいに至ると一段と味が落ち、その上、一種のくせもあるので、全然文句なしというわけにはいかない。
ひらめの洗いづくりもやられないことはないが、東京のひらめは大味で、且つ平凡だ。