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りゅうけつせんにしへいく
流血船西へ行く
山本 周五郎
Read 流血船西へ行く (りゅうけつせんにしへいく) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 9,026 characters · 19 screens
叫びながら伊藤次郎が、うん――と鉄板の一部を持上げる。刹那! 待構えていた連中が手に手に瓦斯弾を持って、その穴の中へ叩込んだ。――ばあん、ばあん、ばあん※(感嘆符二つ、1-8-75) 瓦斯弾の破裂する音が、大きく聞えた。
「みんな射撃の用意!」
伊藤青年が身を退けて叫ぶ。
「いま出て来るぞ」と、言い終らぬ間に、船底から大きく、
「助ケテ下サイ、手向イシマセン」
「命ダケハ、助ケテ下サイ」という英語の悲鳴が聞えて来た。呆気に取られて暫くは口も利けなかった船長は、急に穴の入口へ近づくと、
「出て来い、武器を捨てて出て来い、少しでも反抗すると射殺するぞ、早くしろ」
と喚きたてた。――その声に応ずる如く、苦しそうに咳をしながら、次々と十六名の外国人が現われて来た。
謎は解かれた。
彼等は×××国の密令を帯び、日本在住の間諜と密接な連絡をとるため、アラスカの某地から、日本の某海岸まで海底電線を敷設していたのである。――流血船という怪奇を装ったのは、他の船を近寄せぬためで、船底の下に、もう一つの敷設船が取付けてあった。また海坊主というのは敷設用の特殊な潜水服(軽金属で出来ている)であって、この潜水服は酸素管を持った自働式の物であり、両手は鋭い鋼鉄の鉤になっている。