Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
うみにいくるひとびと
海に生くる人々
葉山 嘉樹
Read 海に生くる人々 (うみにいくるひとびと) by 葉山 嘉樹 (はやまよしき) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 161,305 characters · 321 screens
彼は、負傷後、イヒチオールを二、三回塗布され、足のガーゼを二、三度自分で取り換えただけであった。彼は傷の疼痛のために、非常にやせてしまった。彼はそのいたさに、彼の神経を極度に疲労させた。
水夫たちが、仕事に出て行って、おもてにだれもいなくなると、彼は、今までためていた苦痛の叫びをあげるのであった。彼は、出任せに何でも叫んだ。そして自分の声に一生懸命聞き入った。彼の足の痛みは負傷後五、六時間を経て、はなはだしくなって来た。彼は、そのぬれた麩のように力なく疲れたからだを、寝箱の中から危うくデッキへ落ちそうにまでもだえ狂った。彼は狂人のように叫んだ。そして、それは、彼自身でも、疼痛に対しては、非常にハッキリした意識を持っていたが、あまりに、そちらの方へのみあらゆる神経を集めたので、自分のもだえや叫喚には、ボンヤリしているのだった。
水夫らは帰って来て、この苦悶のさまを見ると「あまりあばれると、かえって傷が悪くなるから、じっと我慢しておれ」と、慰めるよりほかに道がなかった。水夫たちはボーイ長の負傷に対して、非常な嫌悪の念を一様に感じていた。それは、彼がけがをしたのが、彼の過失だからというのではなかった。