Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

うみのししゃ

海の使者

泉 鏡花

Read 海の使者 (うみのししゃ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 4,811 characters · 10 screens

Aozora Bunko

「こういう時、こんな処へは岡沙魚というのが出て遊ぶ」

と渠は言った。

「岡沙魚ってなんだろう」と私が聞いた。

「陸に棲む沙魚なんです。蘆の根から這い上がって、其処らへ樹上りをする……性が魚だからね、あまり高くは不可ません。猫柳の枝なぞに、ちょんと留まって澄ましている。人の跫音がするとね、ひっそりと、飛んで隠れるんです……この土手の名物だよ。……劫の経た奴は鳴くとさ」

「なんだか化けそうだね」

「いずれ怪性のものです。ちょいと気味の悪いものだよ」

で、なんとなく、お伽話を聞くようで、黄昏のものの気勢が胸に染みた。――なるほど、そんなものも居そうに思って、ほぼその色も、黒の処へ黄味がかって、ヒヤリとしたものらしく考えた。

後で拵え言、と分かったが、何故か、ありそうにも思われる。

それが鳴く……と独りで可笑しい。

もう、一度、今度は両手に両側の蘆を取って、ぶら下るようにして、橋の片端を拍子に掛けて、トンと遣る、キイと鳴る、トントン、きりりと鳴く。

(きりりりり、

きり、から、きい、から、

きりりりり、きいから、きいから、)

紅の綱で曳く、玉の轆轤が、黄金の井の底に響く音。