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かいじょうのみち
海上の道
柳田 国男
Read 海上の道 (かいじょうのみち) by 柳田 国男 (やなぎたくにお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 182,344 characters · 353 screens
た。しかもその試植に参与したという玉城百名の農民の家が、米之子(コメノシ)という称号を賜わって、永く存続したことを附記しているのである。
是らの旧記類はつい近頃まで、いずれも写本であってこれを蔵する家も少なく、また読んで理解する者もめったにないために、鳥が大海を飛び越えて稲の種を運んだという言い伝えは、元から有ったのでなくとも、次々と遠慮なくひろまって、今でも国頭郡の田港の海神祭の神歌には、おし鳥がこの甘種白種を口にくくんで、畔から蒔き散らしたと唱えていることが、島袋源七君の『山原の土俗』に見え、遠く北に離れた奄美大島などでも、その鳥が鶴になっているだけで、やはり稲の種がニライカナイから運ばれたという話が、『南島雑話』には誌されてあると、伊波君は注意しておられる。捜せば他の島々にもまだ幾らもあるだろうが、考えてみると是は必ずしも運搬者のみの問題ではない。稲という穀物の根原がニルヤにあり、これを繁茂せしめて人間の力と幸福とを、豊かにすることが本来の機能であったのかも知れず、いわば南島の根の国が、単なる亡者の隠れ行く処であるに止まらず、絶えず是から流れ出て、現世を楽しく明るくするものの、爰が主要なる源頭であることを、かつて我々は南北共同に、信じていた時代があったのではないか。