Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
かいひんそうのさつじん
海浜荘の殺人
山本 周五郎
Read 海浜荘の殺人 (かいひんそうのさつじん) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 8,672 characters · 18 screens
独り言のように呟くと、
「じゃアおやすみ」と云って静かに出て行った。
――あの人どうしたのかしら。
脅迫状の噂で心配している時も時、いつにない高野千之の妙な素振を見て、志津子の不安は一層強くなった。
――いっそお祖父さまにお話してみようかしら?
否えいけない、折角御気分が好くなっていらっしゃるのに、こんな事をお聞かせするなんて法はないわ。強く頭を振った志津子は、やがて小間使のまさやを呼んで寝衣に着替え、読みさしの本を持って寝台へあがった。
十一時を聞くまでうつらうつらしていたが、いつか眠ったらしい。何処かでずどーんと無気味な物音がしたのではっと眼が覚めると、丁度壁の時計が一時を打った。
――妙な音がしたようだけど。
寝台の上へ起直ると、続いて何処かでばたんと扉の閉る音がした。
――お祖父さまのお部屋だわ。
そう思ったので、寝衣の上から寛衣を引掛け、寝室を出ると急いで老子爵の部屋へ馳けつけた。
「お祖父さま、お眼覚め?」
扉を叩きながら呼んだ。
「…………」
「お祖父さま、まだお眼覚め?」
「…………」
返事は無かった。――若しや? と思うと矢も盾も堪らず、扉を押開いて中へ入った。