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りんらくのこうじょのおぼえがき
淪落の皇女の覚書
久生 十蘭
Read 淪落の皇女の覚書 (りんらくのこうじょのおぼえがき) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 28,649 characters · 56 screens
母はご承知のようにヘッセンのアリスですが、それを推薦したのはカイザアとビスマルクで、ペテルブルグへ呼んだのはアリスの姉、ゲオルグ大公妃のエリザベトです。祖父(アレクサンダア三世)はたいへん気に入って大乗気だったのですが、父がどうしても承知しないので、せっかくのアリスの顔見せも意味のないことになってしまいました。
アリスはヘッセンへ帰ることになり、送別の夜会があった晩、アリスは祖母(マリア・フェオドロオウナ)のそばへ行って、婚約不成立のみじめな結果を諷刺して、こういったそうです。「ロシアであったことはみな面白うございましたわ。帰ったらロシアで学んだことを早速やってみるつもりです」すると祖母は気の毒がって、「なにをなさるつもりか知らないけど、お国へ帰ってなさることなんかないのよ。なさりたいことがあるならロシアをいいようにお使いになればいいのです」といったそうですが、これはうまく言いあてた偉大な予言になりました。なぜかといえば、祖父は転地先のクリミヤ半島のリヴァディヤの離宮で、いまにも息をひきとるかといった大芝居をして見せ、臨終のたのみだと気の弱い父をおしつけて力ずくでアリスと結びつけ、アリスは「ロシアを思い通りに使うために」