Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しぶえちゅうさい
渋江抽斎
Read 渋江抽斎 (しぶえちゅうさい) by Mori Ōgai (森 鴎外) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 166,525 characters · 334 screens
文蔵は仮親になるからは、真の親と余り違わぬ情誼がありたいといって、渋江氏へ往く三カ月ばかり前に、五百を我家に引き取った。そして自分の身辺におらせて、煙草を填めさせ、茶を立てさせ、酒の酌をさせなどした。
助太郎は武張った男で、髪を糸鬢に結い、黒紬の紋附を着ていた。そしてもう藍原氏かなという嫁があった。初め助太郎とかなとは、まだかなが藍原右衛門の女であった時、穴隙を鑽って相見えたために、二人は親々の勘当を受けて、裏店の世帯を持った。しかしどちらも可哀い子であったので、間もなくわびがって助太郎は表立ってかなを妻に迎えたのである。
五百が抽斎に帰いだ時の支度は立派であった。日野屋の資産は兄栄次郎の遊蕩によって傾き掛かってはいたが、先代忠兵衛が五百に武家奉公をさせるために為向けて置いた首飾、衣服、調度だけでも、人の目を驚かすに足るものがあった。今の世の人も奉公上りには支度があるという。しかしそれは賜物をいうのである。当時の女子はこれに反して、主に親の為向けた物を持っていたのである。五年の後に夫が将軍に謁した時、五百はこの支度の一部を沽って、夫の急を救うことを得た。