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わたらせがわ
渡良瀬川
大鹿 卓
Read 渡良瀬川 (わたらせがわ) by 大鹿 卓 (おおしかたく) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 280,528 characters · 557 screens
その社会に疎い身で、もともと社会に疎い地方村落に帰って離間中傷の迷夢にまきこまれ、愚痴と卑屈に取りかこまれていれば、ますます社会の真相と真正の道理に暗くなる。そうした警告に併せて、はやく出京して運動せよという督促であった。
彼等にすれば、入獄の痛手が心身に食いこんでいることも事実だった。帰郷後は容易に再び起つ気力をとりもどし得ないでいた。周囲の者から泣きつかれたり牽制されたりして、不自由な境遇にいた。正造もその事情はほぼ察してはいたが、情勢は、なお彼等を鞭撻してその中から立ちあがらせねばならぬところへきていた。
この月の二十四日には、前橋裁判所で正造自身の被告事件の公判があった。
鉱毒問題の真相を訴えるために、正造が病中を押してあわただしく関西へ往復したのも、この前後であった。
越えて六月二十日には、内村鑑三を案内して被害地へむかった。これは去月二十一日に鉱毒調査有志会の楠本正隆、津田仙、三宅雄二郎、高木政勝、内村鑑三、田中弘之等が基督教青年会館に集会して、死亡増加の真偽を調査することを議決した結果である。人命のことは根本問題である。この事実さえ確めれば、他の枝葉の利害は論ずるに足らぬというのであった。