Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

みなとについたくろんぼ

港に着いた黒んぼ

小川 未明

Read 港に着いた黒んぼ (みなとについたくろんぼ) by 小川 未明 (おがわみめい) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.

N3 · intermediate · modern kanji and kana · 6,903 characters · 14 screens

Aozora Bunko

港の方では、出入りする船の笛の音が、鈍く聞こえていました。明るい、あめ色の空に、黒い煙の跡がわずかに漂っている。それは、これから、青い、青い波を分けて、遠く出てゆく船があるのでありました。

その日も、二人のまわりには、いつものごとく、人が黒山のように集まっていました。

「こんないい、笛の音を聞いたことがない。」と、一人の男がいいました。

「私は、ほうぼう歩いたものだが、こんないい笛の音を聞いたことがなかった。なんだか、この笛の音を聞いていると、忘れてしまった過去のことが、一つ、一つ心の底に浮かび上がって目に見えるような気がする。」と、他の一人の男がいいました。

「あれで目があいていたら、どんなかわいい男の子でしょう。」と、ある一人の女がいいました。

「私は、あんな器量よしの娘を見たことがない。」と、他の年をとった、荷物をかついだ旅の女らしい人がいいました。

「あれほどの器量なら、こんなことをしていなくてもよさそうなものだ。あんな美しい娘なら、だれでももらい手があるのに。」と、脊の低い男がのびあがって、あちらを見ながら、いっていました。

「きっと、あれには、だれかついているものがあるでしょう。