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ゆなのたましい
湯女の魂
泉 鏡花
Read 湯女の魂 (ゆなのたましい) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 27,936 characters · 55 screens
「それじゃ柏屋の姉さん、一つ申上げることにしよう。」
「まあお酌を致しましょう。私だって可いじゃありませんか、あれさ。」
「いや全く。お雪さんでも、酒はもう可かんのだよ。」
「それじゃ御飯をおつけ申しましょう、ですがお給仕となるとなおの事、誰かにおさせなさりとうございましょうね。」
「何、それにゃ及ばんから、御贔屓分に盛を可く、ね。」
「いえ、道中筋で盛の可いのは、御家来衆に限りますとさ、殿様は軽くたんと換えて召食りまし。はい、御膳。」
「洒落かい、いよ柏屋の姉さん、本当に名を聞かせておくれよ。」
「手前は柏屋でございます。」
「お前の名を問うのだよ。」
「手前は柏屋でございます。」
と上手に御飯を装いながら、ぽたぽた愛嬌を溢しますよ。
五
御膳の時さえ、何かと文句があったほど、この分では寝る時は容易でなかろうと、小宮山は内々恐縮をしておりましたが、女は大人しく床を伸べてしまいました。夜具は申すまでもなく、絹布の上、枕頭の火桶へ湯沸を掛けて、茶盆をそれへ、煙草盆に火を生ける、手当が行届くのでありまする。
あまりの上首尾、小宮山は空可恐しく思っております。