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ゆしまのけいだい
湯島の境内
泉 鏡花
Read 湯島の境内 (ゆしまのけいだい) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 8,674 characters · 18 screens
場所がらを知らないかい。
お蔦 嬉しい、久しぶりで叱られた。だけれど、声に力がないねえ。(とまた案ずる。)
早瀬 早く行って来ないかよ。
お蔦 あいよ。そうそう、鬱陶しいからって、貴方が脱いだ外套をここに置きますよ。夜露がかかる、着た方が可いわ。
※(歌記号、1-3-28)気転きかして奥と口。
お蔦 (拍手うつ。)
天神様、天神様。
早瀬 何だ、ぶしつけな。
お蔦 (それには答えず)やどをお頼み申上げます。
早瀬 (ほろりと泣く。)
お蔦 (行きかけつつ)貴方、見ていて下さいな、石段を下りるまで、私一人じゃ可恐いんですもの。
早瀬 それ見ろ、弱虫。人の事を云う癖に。何だ、下谷上野の一人あるきが出来ない娘じゃないじゃないか。
お蔦 そりゃ褄を取ってりゃ、鬼が来ても可いけれども、今じゃ按摩も可恐いんだもの。
早瀬 可し、大きな目を開いて見ていてやる。大丈夫だ、早く行きなよ。
お蔦 あい。
※(歌記号、1-3-28)互に心合鍵に、
早瀬見送る。――お蔦行く。――
…………………………
※(歌記号、1-3-28)はれて逢われぬ恋仲に、人に心を奥の間より、しらせ嬉しく三千歳が、
このうたいっぱいに、お蔦急ぎあしに引返す。