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とうみょうのまき
灯明之巻
泉 鏡花
Read 灯明之巻 (とうみょうのまき) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 23,444 characters · 47 screens
「ええ塩梅だ。さあ、やらっせえ、さ。」
掻い候え、と言うのである。これを思うと、木曾殿の、掻食わせた無塩の平茸は、碧澗の羹であろう。が、爺さんの竈禿の針白髪は、阿倍の遺臣の概があった。
「お前様の前だがの、女が通ると、ひとりで孕むなぞと、うそにも女の身になったらどうだんべいなす、聞かねえ分で居さっせえまし。優しげな、情合の深い、旦那、お前様だ。」
「いや、恥かしい、情があるの、何のと言って。墓詣りは、誰でもする。」
「いや、そればかりではねえ。――知っとるだ。お前様は人間扱いに、畜類にものを言わしったろ。」
「畜類に。」
「おお、鷺によ。」
「鷺に。」
「白鷺に。畷さ来る途中でよ。」
「ああ、知ってるのかい、それはどうも。」
四
――きみ、きみ――
白鷺に向って声を掛けた。
「人に聞かれたのでは極りが悪いね……」
西明寺を志して来る途中、一処、道端の低い畝に、一叢の緋牡丹が、薄曇る日に燃ゆるがごとく、二輪咲いて、枝の莟の、撓なのを見た。――奥路に名高い、例の須賀川の牡丹園の花の香が風に伝わるせいかも知れない、汽車から視める、目の下に近い、門、背戸、垣根。