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とうみょうのまき
灯明之巻
泉 鏡花
Read 灯明之巻 (とうみょうのまき) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 23,444 characters · 47 screens
遺憾さに、内は広し、座敷は多し、程は遠い……
「お誓さん。」
黒塀を――惚れた女に洋杖は当てられない――斜に、トンと腕で当てた。当てると、そのまくれた二の腕に、お誓の膚が透通って、真白に見えたというのである。
銑吉の馬鹿を表わすより、これには、お誓の容色の趣を偲ばせるものがあるであろう。
ざっと、かくの次第であった処――好事魔多しというではなけれど、右の溌猴は、心さわがしく、性急だから、人さきに会に出掛けて、ひとつ蛇の目を取巻くのに、度かさなるに従って、自然とおなじ顔が集るが、星座のこの分野に当っては、すなわち夜這星が真先に出向いて、どこの会でも、大抵点燈頃が寸法であるのに、いつも暮まえ早くから大広間の天井下に、一つ光って……いや、光らずに、ぽつんと黒く、流れている。
勿論、ここへお誓が、天女の装で、雲に白足袋で出て来るような待遇では決してない。
その愚劣さを憐んで、この分野の客星たちは、他より早く、輝いて顕われる。輝くばかりで、やがて他の大一座が酒池肉林となっても、ここばかりは、畳に蕨が生えそうに見える。通りかかった女中に催促すると、は、とばかりで、それきり、寄りつかぬ。